目次
本記事の対象者
- マーケティング担当者
- マーケティングに興味のある方
- 経営者
- ビジネス上で意思決定するすべての人
「ジョブ理論」の概要
ジョブ理論とは「イノベーションのジレンマ」等で有名なクレイトン・クリステン教授が提唱した「人々はなぜそれを買うのか?」を定義した理論です。
ではここでジョブ理論でもっとも有名な「朝のミルクシェイク」の例を紹介します。
筆者があるファーストフード点の「ミルクシェイク」のプロジェクトに関わっていた時の経験です。
彼らはプロジェクトを成功させるため、詳細に顧客データを集めました。
・安いからですか?
・味が好きだからですか?
・競合のミルクシェイクと比べて、チョコレートの味が濃いからですか?
そしてそのフィードバックに答えて、様々な施策を試しました。
しかしその結果、売上は全く伸びなかったのです。
そこで筆者は朝から店頭に立ち、「なぜそのミルクシェイクを買ったのですか?」と聞いてみました。
「仕事先まで、長く退屈な運転をしなければならない」
「通勤時間に気を紛らわせるものがほしい」
「バナナはすぐ食べ終わる。ドーナッツはくずが落ちるし、手がベトベトする。」
「ベーグルはパサパサしていて味がないし、ジャムを塗ろうと思うと膝で運転しなければなくなる」
「スニッカーズも試したが、朝食に甘いお菓子なんてうしろめたくて・・・」
味や値段、ましては競合との差の話は全く出てこないのです。
ではなぜミルクシェイクは選ばれたのか?
どろりとしたミルクシェイクを細いストローで飲み終わるまでには長い時間がかかり、朝食と昼食のあいだにふいに感じる空腹をかわすのに充分な量がある。また車のカップホルダーにぴったり収まるので、手が汚れない。
つまりミルクシェイクは「朝の通勤のあいだ、目をさまさせてくれていて、時間をつぶさせてほしい!」という顧客のジョブを数あるライバル(バナナ・スニッカーズ・ドーナツ)よりうまく片付けることができる商品だったのです。
上記でジョブという言葉を使いましたが、筆者はジョブを以下のように定義しています。
■ジョブとは?
ある特定の状況にて、人が成し遂げようとする目的。
そしてこの成し遂げたい目的(ジョブ)を解決するために人々は商品を「雇用」する。
今回の朝のミルクシェイクの例でいうと
特定の状況→朝の通勤時間
ジョブ→朝の通勤のあいだ、目をさまさせてくれていて、時間をつぶさせてほしい!
ということになります。
このことから夕方に(特定の状況)ミルクシェイクを買う人はまた別のジョブを成し遂げようとしているのです。
東京都内で朝にマックシェイクを買う人が、
「朝の通勤のあいだ、目をさまさせてくれていて、時間をつぶさせてほしい!」
というジョブを片付けたいことは少ないでしょう。
そもそも東京都内で車通勤をしてる人が少ないからです。
ではマーケターや経営者はジョブ理論を活用することでどんな選択肢を得ることができるのでしょうか?
無消費と競争する
以下の引用がすごくわかりやすいです。
エアビーアンドビーのグローバル戦略部門のトップ、チップ・コンリーによると、
借り手であるゲストの40%は、エアビーがなければ旅行に出かけなかったか、家族の家に泊まっただろうと言うそうだ。
また貸し手であるホストもほぼ全員が、エアビーが出現する前は、一部屋だけにしろ家一軒にしろ、人に貸そうなどと思ったこともなかったそうだ。
つまりエアビーは無消費とも競ってきたのだ。
これってすごくないですか?
たしかに今や当たり前のように「エアビーしよー」と言います。
でもよくよく考えると「エアビーしよー」って意味わからなくないですか?
でもそこに価値があります。
エアビーの有名なキャッチャーコピーがあります。
「行くのではなく、暮らすのです(Don’t GO There. Live there.)」
つまりその土地の暮らしを友人と体験しに行くことに価値があり、
そのことを友人は「エアビーしよー」と呼んでいるのです。
ではなぜエアビーは無消費層を獲得することができたのでしょうか?
ジョブは機能面だけでなく、社会的および感情的側面も重要
ではエアビーのジョブを機能面と感情的側面に分けて考えてみましょう。
機能面→滞在する場所
感情面→その土地でしか味わえない体験や雰囲気
機能面において、エアビーはチェーンのホテルには敵いません。
チェーンのホテルの方がアクセスが良く、清潔で、ましてや安いです。
しかし、特にミレニアム世代の若者は旅をする時エアビーを選びます。
それは彼らにとっての旅行は機能面<感情面だからです。
もちろんジョブ理論に当てはめると、それは特定の状況によるので、一概には言えません。
しかしエアビーが旅行における感情面のジョブを的確に捉え、
無消費層の取り込みに成功し、新たなマーケットを開拓したことはマーケター全員が参考にすべき事実です。
最後に
じゃあどうやって顧客のジョブを発見するの?
となる方は多いと思います。
その手法論については元スマニューCMOの西口さんの著書で紹介されているN1分析が非常にわかりやすく、実践的です。
良ければこちらにN1分析の要約も書いているので、
同時に見ていただくとジョブについての解像度が更に高まると思います。
参考