マーケ雑記

【5分に要約】USJを劇的に変えた、たった一つの考え方

本記事概要

対象者

  • マーケティング担当者
  • マーケティングに興味のある方
  • 経営者
  • ビジネス上で意思決定するすべての人

目的

  • マーケターの存在意義を理解して、戦略思考を身に着ける

筆者

Web系会社のインハウスマーケター(https://twitter.com/sampling2x

USJを劇的に変えた、たった一つの考え方の重要ポイント

①概要

USJのCMOを経験された森岡毅さんの実務経験を元に、マーケティングのノウハウが詰まった本です。
あの有名な「ハローウィンホラーナイト」も森岡さんの企画なのですよ。
当時大学生だった私も例のごとく、森岡さんの術中にハマり、きゃっきゃと楽しませてもらいました。笑

そんな敏腕マーケターの森岡さんは本書の冒頭で

「マーケティング思考」は、全ての仕事の成功確率をグンと上げます。ビジネスで成功したい全ての人は、マーケティング思考を一度しっかりと学んでおくべきです。なぜならばマーケティングこそがビジネスを成功させるための方法論だからです。

と述べています。

そして本書は森岡さんの実務経験を元に「マーケティング思考」を体系的にまとめています。良くあるマーケティング技術書ではなく、実務者視点の方法論です。
具体例も多く、「ああ、あるある」と共感しながら、学べる部分が多いです。
そのため全ビジネスパーソンにおすすめできます。ぜひこの記事を見た後、本書を手にとって見てください。

②そもそもマーケティングって何?

本書を理解しながら読み進めていくために、「マーケティング」という言葉の解像度をあげる必要があります。

森岡さんは以下のように定義されています。

「商品を売るのは営業の仕事」、「商品を売れるようにする」のはマーケティングの仕事。

つまり自社商品が顧客に、「選ばれる必然」作れているということです。

モノと情報が溢れているこの時代に、
「いつのまにかA社の商品を愛用していた」と思わせるブランドになることがマーケティングの本質なのかなと思いました。

本書では「選ばれる必然」を作るためには、以下の3つの接点を制することが必要と述べています。

①消費者の頭の中を制する
②買う場所を制する
③商品の使用体験を制する

具体的な方法はぜひ本書を読んでみてください。

③マーケティング(消費者視点)が難しい理由

「マーケティング」とは「選ばれる必然」をつくることです。

そしてその核となるのは「消費者視点」です。

P&Gが信じている価値観に「Consumer is boss.」があることや、
「Consumer Drivern Conpany」であるべきと多くのマーケターが言っているように、もはやビジネスにおける基礎であると多くの人が認識しているはずです。

ではなぜその基礎が疎かになるのでしょう?
理由は2つあります。

消費者視点が難しい理由

①作る側は消費者感覚から最も遠ざかる運命にあるから

作り手はプロとしての技術を業界で毎日見ており、どんどん目が慣れてしまいます。そして彼ら自身の「感動の基準」が一般消費者のそれとはどんどん離れて行きます。そして無意識のうちに彼らの良いと思うもの(=玄人好みのもの)を作るようになっていくのです。

②会社という人が多く集まっている集団の中では、会社の利害と個人の利害が必ずしも一致しないから

これはある意味仕方ないことだと思うのですが、多くの人が個人の利害を会社全体の利害より優先させてしまいます。また大企業ではこれに部門間の利害も絡んできます。そして社内調整を行なっているうちに「消費者価値」から「玉虫色」の妥協案に近づいていくのです。
良くありますよね、「会議のための会議」の資料を作っていること。

「わかる〜」と共感される方も多いと思います。私もめっちゃわかります。
しかし筆者はこのような状態を自然状態だと言っています。普通ならそうなるよねーと。

ではどのようにして、「消費者視点」を会社単位で持つことができるのでしょう。
④マーケター の使命で詳しくまとめています。

④マーケターに必要な戦略的思考とは?

ではまずそもそも戦略とは何か?

森岡さんは以下のように定義されています。

戦略とは、目的を達成するためのリソースを配分する「選択」のこと。

そしてなぜ「戦略」が必要なのでしょう?

①達成すべき目的があるから
②資源(人、モノ、金、情報、時間、知的財産)が常に不足しているから

ようは常にリソース不足な状態が普通なので、「選択と集中」しろよ!ってことです。

本書のメインメッセージの一つがこの戦略的思考であり、その核となる基本理念が「選択と集中」であると思っているので、もう少し具体的に引用していきます。

1 0 0人の軍隊と 8 0人の軍隊が戦ったとします 。 1人 1人の戦闘技能は全く同じだとしたら 、どちらの軍隊が勝つと思いますか ?普通は 1 0 0人の軍隊が勝つだろうと思いますね ?しかし実際はそうとも限らないのです 。図 Aのように 、 1 0 0人の軍隊が 2 0人ずつ部隊を 5つに割って攻めてきたとします 。それに呼応して 8 0人の軍隊も部隊を 5つに分けて 1 6人ずつで応戦したらどうなるでしょうか ? 5つの全ての戦局で数的劣勢が免れません 。 1人当たりの戦闘力が同じと仮定すると 、 2 0人対 1 6人の殺し合いを 、 5つの戦局で行った結果は 「 5対 0 」となり 、 1 0 0人の軍隊が高確率で一方的な勝利をおさめることになります 。
しかし 8 0人の軍隊に優秀な軍師がついて 、 5隊に分かれた 1 0 0人の軍隊に対して図 Bのように戦ったらどうなるでしょうか ? 8 0人の軍隊は 、隊を 5つではなく 3つに分けます 。そして 4番と 5番の 5局を完全に放棄して 、 1 ~ 3番の戦局にのみ 「 3 0人 、 2 5人 、 2 5人 」の 3部隊を展開するのです 。すると 4 ~ 5番は負けるとしても 、 1 ~ 3番では勝利できます 。大局としては 「 2対 3 」で 8 0人の軍隊が勝つことができます 。数的有利は必ずしも大局での勝利を保証するものではないのです 。大切なことは 、大局で勝つために大事な 1戦闘当たりの数的優位をどうやって作り出すか 、そのために何を捨ててどこに集中するのかを選択することです 。

 

そして続けて以下のように言及されています。

1 0 0人の軍隊を 5つに割ってしまうケ ースは 、現実のビジネスではよくあるパタ ーンなのです 。
図 Cを見て下さい 。 1 0 0という経営資源を 、 5つのマ ーケティング活動の全てに割り振ってしまったがゆえに 、どの戦局においても資源が足りず 、 「勝てるライン 」に届かないで負けてしまうパタ ーンです 。これは予算の分配と見てもかまいませんし 、部員の人員配置と見てもかまいません 。

 

やることを選ぶということは、同時にやらないことを選ぶとうこと。これが戦略の核となる考え方の「選択と集中」です。全てやろうとすることは、つまり選ばないということは、戦略がないということです。とりあえず全てやろうとすることは、意味なく経営資源を分散させてしまうだけ。愚か者のすることです。

すごくわかりやすいですよね。
現場のマーケティング担当者として、凄くひやっとさせられました。

今の職場は非常にデータ・ドリブンな会社です。
まずは小さくやって、PDCAを回してみようという考え方が会社に根付いています。
確かにその考えも不確実性の高い、現在のビジネス環境では大切だと思います。
しかし戦略なき、戦術は長期的に見ると非常にリソースの無駄使いだな。と感じました。
戦略下で戦術でPDCAを回すのです。

この「選択と集中」の章で森岡さんは以下のようにまとめられています。

とりあえず全部やろうとすることは、無意味に資源を分散させているだけの「戦略なき愚か者」のすることです。そこに戦略がなければ突出した成果などは望めないのです。

そしてこの戦略的思考を身に付けたら以下の2つの変化が起こると言及されています。

①重要なことに集中して取り組めるので、仕事の成果が抜群にあがる。

②説得力が激増する。戦略性を身につけることで、他の人に対して納得感をもたせる話し方ができるようになります。

この章で戦略的思考の本質と、身に着けることによって出来るようになることを学びました。

ここで③マーケティング(消費者視点)が難しい理由で言及した、
どのようにして会社単位で「消費者視点」を持つのか?
という問いに以下の⑤マーケターの使命でまとめています。

⑤マーケターの使命

そもそもマーケターとは?

森岡さんは以下のように定義しています。

マーケティングをできる人のことをマーケターと呼ぶのです。

では企業におけるマーケティングに求められるものは何でしょう?
多くの場合はトップライン(売上)の伸ばすことです。

そしてトップラインを伸ばすために重要なことは会社として消費者視点を持つことです。

つまり企業の軍師でもあるマーケターはその戦略的思考を持って、
「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」を正しく見極めること。
そして正しい方向へ会社を無理矢理にでも引っ張っていくことだと、私は考えています。

もしあなたが消費者視点と戦略的思考を持って、会社の正しい方向性のAを導きだしたとします。

一方で会社のトップである社長が部門間の折衷案である消費者視点のかけたBの方向性を採用しようとしたらどうしますか?

誰がなんと言おうとA案を採用するのがマーケターの使命です。
そして採用させるだけでなく、自分が起点となり、戦略的思考をふんだんに使い、
各部署を説得力し、人を動かすことも仕事の一つです。
マーケターは会社を勝たせるためになんでもやる実務者なのです。
CMを作る人やweb広告を運用する人であってはならないのです。

⑥戦略と戦術の違い

戦略の重要性については理解できました。

急ですが、みなさんは「戦略」と「戦術」という言葉の意味の違いを説明できますか?

森岡さんは以下のように定義されています。

「戦略」とは目的を達成するためのリソースの選択でした。「戦術」は戦略を実行するための具体的なプランのことを指します。戦術は常に戦略の下位概念です。戦略的思考は必ず、「目的→戦略→戦術」と下方展開していきます。目的に直結している上位概念である戦略は、実際には消費者からは見えにくいものなのです。
ビジネスでも戦争でも、実際のドンパチは、この「戦術」の段階です。言い換えれば、消費者が目にするものはほとんど戦術なのです。マーケティングにおいては、消費者の最前線で勝つことが「戦術」の使命であり、これが弱いとどんなに優れた戦略でも実現せず、絵に描いた餅で終わります。目的が達成されることもありません。勝つために戦術は非常に重要です。

つまり、目的ありきの戦略。戦略ありきの戦術ということです。

またまたマーケティング担当者としてひやっとする指摘を引用しますね。

決して具体的で発送しやすい戦術から考えないということです。目的と戦略が定まらない限り、戦術に費やす時間は無駄になる可能性をはらんでいるのです。

繰り返しにはなりますが、マーケターは企業の軍師です。
チームを勝たせるために、どう戦うか(戦術)の前に、どこで戦うか(戦略)を何よりも大事ということを改めて理解できました。

⑦美しい戦略とは

美しい戦略というのは、相手と自分の特徴の差を、自身に有利になるように活用できるているものです。

もっとも古典古典的な戦略の良し悪しのモノサシに、戦略の4Sチェックがあります。

◾️戦略の4S
Selectice:選択的かどうか?
Sufficient:十分かどうか?
Sustainable:継続可能かどうか?
Syncgronized:自社の特徴との生合成は?

この4Sにしっかり強みを持たせるために、
情報をきっちり取得し、多角的に分析をする必要があります。

この戦略というのは正解はないと森岡さんは言っています。
だからこそ面白いと。
私も常に戦略的思考で物事を考える癖をつけ、マーケターとしてまだまだ楽しみながら成長したいものです。

⑧フレームワークという便利道具をうまく使う

フレームワークとは「整合性のある戦略と戦術」を生み出しやすくなる便利な道具です。
人はすぐ具体的(戦術)なことを考えたくなる動物です。
フレームワークを使うことで戦略的な視点を持って思考しやすくなるよーということです。

ここでは戦略的思考で学んだ4つの概念(Objective(達成すべき目的は何か?)Who(誰にうるのか?)What(何をうるのか?/戦略)How(どうやってうるのか?/戦術))や5C分析について触れられているのですが、森岡さんは何より「戦況分析」が大切だと言われています。

戦況分析とは、「市場構造」をよく理解して、それを味方につけるためにやるのです。ビジネスに限らず、人間の営みは全て「構造的な仕組み」に収束していきます。

この市場の構造を1つの機会(マシーン)と捉えて、その仕組みをちゃんと理解することが重要です。

水は高いところから低いところに流れます。それが自然の原理です。水を低いところから高いところに流すことは不可能ではありませんが、多くのエネルギーを使います。同じく市場構造に逆らうことも不可能ではありませんが、膨大な経営資源が必要になるのです。

戦況分析を本気でやる理由は、市場構造に逆らって確実に失敗する「地雷」を避けるためです。そしてできればその市場構造を自分の味方につけられるような戦略がないか考えるためです。

かつての天才軍師たちの多くも、この戦況分析を重視したそうです。
戦いを始めるずっと前から想定される戦場を自分で歩き、自分の目でみたのです。

マーケターもまずは自分が戦う市場構造を時間をかけて分析し、時には自分が圧倒的な消費者になるまで体験する必要があることを改めて痛感させられました。

⑨マーケティングって最高じゃない?

マーケティングとは消費者価値を向上させるための科学、つまり人を幸せにするために徹底された科学なのです。

参考

ABOUT ME
Okada Shogo
マーケター@Coincheck